2/8 部室

 祭に来た。二階建ての日本家屋風の建物だ。私は一階にあった多目的トイレにこもり、ホテルのドアについているような覗き窓を見ながら、なにかが来るのを待っている。

 時折誰かがやってくる。覗き窓はとても見づらい。私はなんとかそれらをやりすごした。トイレに持ち込んだものを、やってくるなにかに渡さなければいけない。来なかったが。

 

 趣味の合う友人たちがいる。心からの友というほどではないが、自分のペースで接することができていたかもしれない。

 彼らは祭に来ている。私はトイレを出る。彼らは私と会話をすることも、私の姿を見ることもなかったはずだ。だが彼らは私がこの場にいることを知っている。私も彼らがいることをわかっている。見てはいないが。

 

 私が戻ると、トイレのあるあたりはすでに鍵がかかり入れなくなっている。

 友人たちは私がなにかに渡そうとしたものをあらかじめ外に出しておいてくれたようだ。何かを食べながら締まった扉の前で待っている。私もそれをもらい、食べながら帰る。

 

 建物の一階にいたはずだが、日本家屋風の階段を降りる。

 祭に来ていた友人たちは、すれ違う人みんなと声を掛け合っている。浴衣のひとや金髪のひとなど、いろいろな人と友達になっていた。

 

 特に示し合わせなどはなかったが、集合写真を撮るらしい。外は洋風で、石畳が敷かれている。

 友人たちは輪に加わる。トイレにこもっていた私はどうすればいいかわからない。

 口いっぱいに詰め込んだままの何かを飲み込めないまま、咀嚼しつつ集団の中をうろつく。友人たちの姿は見えない。

 

 どこにも行けない。気持ち悪いような気がする。

 詰め込んだものをオエッといいながら手でおさえる。きっと気持ち悪くはない。フリだ。したがってこの苦しみは、この次元においては本物ではありえない。

 自分に見向きする人間は当然いない。耐えられなくなり、トイレへ駆け込む。

 

 口の中の何かをすべて洗面台に出す。

 息をついていると、自分の姿が鏡に映っているのに気づく。気持ち悪く、本当に自分なのかはわからないと思っている。

 ニヤリと笑ってみると、鏡はそれを反映した。なんか文章にしたらいい感じになる気がする。ならないが。