宇多田ヒカル『初恋』

宇多田ヒカルの中ではこのアルバムを最もよく聴く。

このアルバムを初めて聴いたときは、ドラムにクリスデイヴが参加しているという話を聞いてのことだった。彼は現代のドラマーでは明らかに別格の存在だが、この『初恋』では100点満点の文句の付け所のない演奏をしているのみで、別段面白くはない。宇多田の歌も、同じ理由で特に惹かれる感じはしない(クリスデイヴとはまた違う「100点」という感じはするが)。

 

むしろ魅力を感じているのは、「あなた」で繰り返されるブラスや、「Good Night」のギターや、「嫉妬されるべき人生」の電子音などだ。

別に多くの役割を担っているものではないのだが、これらからそれぞれの世界が開けているような感じがする。

 

「あなた」のブラスは日も登らない朝のダブリンとくっついて離れないのだが、夕焼けのような赤い色をしている。