行方
この日私のもとへ届いた一篇の詩は
私を滅ぼし
やがて世界を滅ぼすだろう
私は
白痴としてふるまい
白痴に蝕まれながら
ついに白痴とならず
読むたびかすんでゆく文字を眺めるばかり
単に白紙を見つめるようになった私
隣に腰かけた旧友は
ところどころ未知となった言葉で語り 笑う
詩から引き剥がれた文字が
川のほとりで病を癒やす
もしくは石と痛みを分かつ
それから
じめついた本棚で知るよしもなかった
乾いた 位置を占めない風に身を預ける
麦を刈る少女の歌声に心ゆらぎながら
ついには風になることを選ぶ
ならば
草原の無邪気な偶然を抜けた風は
埋もれ木とともに
朱く染まった海へ溶け出すその終りに
一篇の詩の意味を知るのだろう