春の やさしさ の うわべ もの書き 気高く 空をつかむ 顔なき赤子 遠く あざ笑う 雄弁には 雄々しき 輪郭 が 纏われたままに ある

かすむ視界の端の頭を持ち上げつつある金色の葉の輝き伝う雨露の歓びの恐怖

雪の降る日

地下室でぼくの頬をなでようとした その傷だらけの手は 首を絞めることを厭わないのに 触れることさえためらう こどものように歌ってみても きみは 泣くことも笑うこともできない きみがつまずいてみてできた傷は その手の傷とは似ても似つかない 夢から夢へ…

線分を丸め 端と端をくっつけて そのちょうど境目をまたいで立った私は 上半身を左右に揺らしている

晩夏

夜更けに浸透する 冷えた雨のにおい 鈴虫の音は 灼熱の残滓をいまだ纏いながら おれの肉をそぎ皮をはぎ 身体の空洞を浮き彫りにする 空の脈打つ闇の隣に 大いなる飢餓を見て 秋の来ないことを悟る

行方

この日私のもとへ届いた一篇の詩は 私を滅ぼし やがて世界を滅ぼすだろう 私は 白痴としてふるまい 白痴に蝕まれながら ついに白痴とならず 読むたびかすんでゆく文字を眺めるばかり 単に白紙を見つめるようになった私 隣に腰かけた旧友は ところどころ未知…