鴉と燕尾服
Minor Mishaps - Tommy Flanagan Trio
ロン・カーターのベースは、鴉が燕尾服を着て踊っているかのようだ。宴には不釣り合いのガラガラ声。
だが、その装いは控えめに言って完璧である。一目でわかる仕立ての良さ。それは自らが身に着けるべきものを歴史の上で捉えている者の装いである。
別に、鴉が燕尾服を着たっていいのだ。燕尾服を着こなすことのできる鴉は、ただ慣習に則ってそれを着ている貴族よりも、燕尾服の持つ意味や、ひいては装いというもの自体について、より深い見識を持っているだろう。メフィストフェレスが高貴な者の装いをするのを目にすれば、きっと同じような印象を受けるに違いない。
素朴な保守的価値観(保守的価値観とは常に素朴でナイーブである)を変えるために必要なことは、その論理を理解した上で、それが内包する繊細さや歴史的経緯をあえて度外視して、別の価値観、別の論理によってそれを揺さぶることである。
ロン・カーターは、ジャズベースの要素のうち、特に音色やピッチ感といった領域においてこの変革を成し遂げた人物である。私は彼の変革の手法に共感するところがある。というのも私が社会に出て、まず官吏になることを志したのは、社会において新たな価値を打ち立てるため、つまり革命を起こすために、社会の仕組みを知る必要があると考えたからである。